「メタボ」と「死の四重奏」

〔モデル 46才 男性〕
メタボ熊

大学に行きたい、と息子が言い出したこともあって俺はスーパーの仕事が終わってから焼肉屋の厨房でアルバイトを始めた。子供には良い教育を受けさせてやりたい、というのはかねてからの俺の望みでもあったからだ。

スーパーの仕事も激務、焼肉屋のアルバイトも激務。
ホントに世間は世知辛く、置かれている状況は苦い。ふと振り返ればもう何年もそんな状況だ。
そのせいか、どうも味覚が変わってきて最近はよく甘いものを食べるようになった。若いころはそんな事なかったのだが。

そうとう激しく動いているのも関わらず、俺のお腹はぽっこりと出てきていつしか屈むのも贅肉が邪魔で一苦労、という体形に変わっていった。いや、俺の周りにも似たような状況のやつはたくさんいた。だから俺が特別って言うことは無かったんだ。
健康診断の結果が思わしくない、と総務に呼び出されるまでは。

死神

「死の四重奏」というおどろおどろしい言葉をはじめて聞いた。
上半身の肥満と糖尿と高コレステロールに高血圧が加わった状態の事で、心筋梗塞になどになるリスクがすごく上がるらしい。俺の数値は見事にその調べを奏でているのだそうだ。

確かに俺の親族には、心臓の病気になる傾向は強い。

「生活習慣を見直して下さいね。」
そう言われたのだが、俺にできることは夜遅く帰って寝る前に二つ食べていた菓子パンをせめて一つに減らす事くらいだった。
どこを見直せばよいのか?
このままでは良くはない、ということはわかっているのだが日々忙殺され、習慣に流される悪循環の中に俺はいた。

稲妻

「そう簡単に変更できない程、無意識の世界に定着しているから『習慣』なのよ。」
昔からの知り合いで、サプリメントマニアのBC30子は俺の最近の心配を聞くと昔からの口調で「当たり前だけれど有無を言わさぬ説得力を持つ事実」を語った。

まったくもってその通り、だ。だから俺は困っているんだ。
俺にとってはむしろ苦手な方の部類に入るこのBC30子に、それでも俺は自ら会おうと言ったのは
「もし、今自分になにか起こったらこれまでの自分の苦労は水の泡となり、そしてその苦労は俺の家族に引き継がれてしまう。」という危機感のなせる業であった。
それだけは避けなければならない。父親として。
「どうするべきかを聞きたい。」

「私がおすすめするのはコレね。」彼女は白と赤の薄い箱を取り出した。
「内容についてはココに詳しく書いてあるわ。一応女性向けのダイエット乳酸菌というパッケージングだけど、それは気にする必要はありません。と、いうのも」

彼女はゆったりとした口調でこう続けた。
「悪い習慣を打ち破るには、それ相応のインパクトが必要なのよ。この乳酸菌にはそれがあるから」と。

俺は試してみることをその瞬間に決めた。

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