幸せ、だからもっと幸せになりたい

〔モデル 38才 女性〕
smile

以前より凛としたオーラを放つようになった隣の奥様が「これが良かった」と言うのだから、その乳酸菌は確かにダイエットや生活リズムの改善に役立つのだろう、多分。
私の現状では特に自分が太っていると悩んでいるわけでもないし、主人は照れもせずに私にきれいだと相変わらず言ってくれている。まあ、何年もよくやるわ、と思うけど私もまんざらでもない。

つまり私は抱えている問題を解決したい、というよりも「今が幸せだからこそ、もっと幸せになれるはず」という欲深い願望を実現したいのだ。
そのせいか、その乳酸菌について書かれたスマートガネデン乳酸菌の真実っというサイトのURLを隣の奥様から聞いて知っており、その気になればいつでも申し込めるにも関わらず「一体、どんな人がこれを案内したのだろう?」ということの方がはるかに気になったのだ。

それというのも、私が今こうして幸せでいられる最大の理由は「私の幸せを願う人々で自分の周りを固めてきたからであり、私にはその人が本当にそう思っているかどうかを見極める目があった」から、である。
「新しいものを取り入れるなら、それは私の幸せを願う人からでなければならない。」
それが戦国大名のように慎重な私の、譲れない信念。

「奥様のようにこれ以上ない程にお綺麗な方が、一体どうしてこれに興味を持たれたのですか?」
心底不思議そうな顔で、私の家に招き入れられたBC30子さんは出された紅茶を飲みながら私に尋ねる。
成程、その質問はもっともなものかもしれない。
おそらく幾人もの人にこの商品をすすめてきたのであろうが、私はその中でもややイレギュラーな部類に入るであろうから。

「それは」
私は即答しようとしたが、ふとBC30子さんの事を隣の奥様から
「もういいお年だと思うけど、まだ独身だと思うわ。」
と聞いたことを思い出した。

私は閃いた。
ここでこの人に罠を張ろう。
この人が自分が幸せであるか否かに関わらず、私の幸福を願うタイプの人間であるのかどうかをテストする事にしよう、と。
そこで私は返答を変えた。
「それは主人のためよ、勿論。私がこうしていられるのも私が主人を心から愛せているから、だと思うの。私は本当に運が良いのよ。」

このように私が答えたのは、私には彼女が少しでも私を妬むようなら即座にそれを見抜く自信があったから、である。
嫉妬心。
この世を不自由なく生きていくのに、最も多く襲い掛かる悪意の根源。
私ほど自分に向けられる嫉妬心に敏感な人間はいない。
さて、この人はどうなのだろう?

「まあ、それはそれは!」
BC30子さんは、満面の笑みを浮かべた。これ以上は望めないほどの子供のような笑顔である。
あまりにも邪心がなくて、かえってコチラがくすぐったくなってしまうほどの漫画に出てくるような完全なスマイル。
感情移入。それも人並み外れている。
私の幸せな状況や心情を想像してそれを味わっているのね。。
「どうも、ごちそうさまです!」
実に愉快そうに笑うBC30子さんにつられて、思わず私まで笑いだしてしまった。
アハハハ。
あなたは合格よ。

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