かつての恋人を見返したい

〔モデル 32才 女性〕
恋人
あと二ヶ月であの人に再び逢うのは少し憂鬱な気もする。
かといって、同窓会の案内はがきの出席の項目に丸をつけて返送した以上、もはや後戻りはできない。
あの人も出席するのだ、と幼馴染から伝え聞いたときに私は一瞬ドキリとした。
その胸の高鳴りが何を意味するのか、は私自身にはわからないが。

捨てられた猫を見れば、誰しも「あの猫は一体どうなっただろう。。」と家に帰っても気になるものだ。
あの人は正にそんな想いをかきたてる男だった。
世捨て人のような冷めた目線。自分の内部には中々入り込ませない強情さ。それでいて誰にでも人懐っこい甘えた性格。

そうあの男は正に捨て猫だった。だからこそ天邪鬼に気まぐれに、私の前からプイと顔を背けていなくなったのだ。もう9年か。

「あるわよ。私の手持ちのカードできっとお気に召すだろうと思うのは、ちょっと変わった乳酸菌ね。」
私の目の前にいるBC30子、というややエキセントリックな風貌の女性は知人から紹介されたサプリメントオタクである。
私が少し驚いたのは、私の無茶振りとも言える注文、
「2ヶ月ほどで、華やかで幸福なオーラを感じさせるようになれるものってある?」
にあっさりと即答したからだった。
まさか、こんなあやふやな注文に即答するとは思っていなかった。。

「もし望む効果が得られなかったら1ヶ月の返金保障」があるという前置きの後で彼女は、
「まあ、気軽に試してみたら。私これのサイト運営してるから。詳しい事はそこに書いてあるし。」
とだけ言ってそれ以上は何も詮索しなかった。

BC30子が帰って一人になった私は、彼女が作ったというサイトを見てずっと考える。
主として考えていたのは「一体自分は何故、そこまでして同窓会の準備をするのか?」という事ではあったが。

ずっとわかっていた答えが心の中で言葉になりかけたが、私はそれが形を成す事を許さなかった。
「今度こそ終りにするわ。」
私は行動を開始する。

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